THE FORMER NARA PRISON

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[歴史]明治五大監獄

1 明治五大監獄の役割

「近代監獄の夜明け」で触れたように、当時の日本政府にとって監獄の整備は急務でした。こうした背景から明治期に竣工された5つの監獄を「明治五大監獄」と呼びます。1901年に建築がスタートした旧奈良監獄を皮切りに、1907年(明治40年)には「長崎監獄」「金沢監獄」「千葉監獄」が、翌年には「鹿児島監獄」が竣工され、ほぼ同時期に監獄としての運営を開始しました。れんがや石造りによる、まるで西洋の城門を思わせる美しい表門からは、“不平等条約”解消への悲願と近代化へ邁進せんとする情熱が伝わってくるようです。幸い、明治五大監獄の完成を待たずして“不平等条約”は撤廃されましたが、明治五大監獄が日本の近代化と、その後の多くの受刑者の服役、更生に貢献した点について疑う余地はありません。
こうした国の威信をかけたプロジェクトから120年あまりの月日が経ち、多くの監獄は老朽化によりその役割を終えることとなりました。各地では今でも美しい表門の一部などを見ることができますが、現在その姿を完全に留めているのは、旧奈良監獄のみになります。
明治五大監獄の所在地

2 千葉監獄

現・千葉刑務所。明治の赤れんが建築は、正門とその奥に続く事務棟のみ現存し、刑務所施設の一部として、竣工当時から現在まで長きに亘り使用されています。
[所在地]千葉県千葉市若葉区貝塚町192 [竣工]1907年(明治40年)
千葉監獄

3 金沢監獄

中央看守所、監房は1971年(昭和46年)に、正門は1976年(昭和51年)に、愛知県犬山市の「博物館明治村」に移築復元されました。金沢監獄跡地には、現在、金沢美術工芸大学が建っています。
[所在地]石川県金沢市小立野 [竣工]1907年(明治40年)
金沢監獄
「博物館 明治村」提供

4 奈良監獄

旧・奈良少年刑務所。耐震性等の問題から2017年(平成29年)に廃庁しましたが、同年、重要文化財に指定され、建物の保存活用が決定しました。明治五大監獄の中で唯一、監獄としての全貌を残す建物です。
[所在地]奈良県奈良市般若寺町18 [竣工]1908年(明治41年)
奈良監獄

5 長崎監獄

“諫早の監獄”とも通称されたレンガ造りの洋式監獄には、竣工当時多くの人が参観に訪れました。1990年(平成2年)に2km離れた地に移転改築されましたが、正門は歴史的建造物として現地に残されています。
[所在地]長崎県諫早市野中町 [竣工]1907年(明治40年)
長崎監獄

6 鹿児島監獄

正門のみ現存。正門はネオゴシック様式で、バトルメントを持つ八角形の双塔を有します。解体撤去された旧刑務所も含め、明治五大監獄では、唯一の石造建築であり、ルスティカ積みの石造が力強い印象を与えます。
[所在地]鹿児島県鹿児島市永吉1丁目30番1 [竣工]1908年(明治41年)
鹿児島監獄
「鹿児島市教育委員会」提供

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